いざという時の相続手続・遺産分割協議書作成
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相続 虎の巻

  【 INDEX 】
              1.「相続」の基礎知識

              2.誰が「法定相続人」か?

              3.それぞれの「法定相続分」は?

              4.「相続分」の修正
                (特別受益・寄与分)

              5.相続人決定時に知っておくと便利な知識
                (欠格・廃除・相続放棄・限定承認・代襲相続)

              6.何が「相続財産」か?

              7.「相続財産」の把握

              8.「遺産分割協議」の基礎知識
         
              9.「相続財産」の名義変更
         
             10.「相続税」の基礎知識


              ※ 『相続トータルサポート』へ戻る


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1.「相続」の基礎知識



     「相続」は、誰もが遅かれ早かれ直面する問題です。
     
人が亡くなると、財産が他者に引き継がれます
     これが「相続」です。


     亡くなった方は「
被相続人」(相続される人という意味です。)、財産を引き継ぐ人を「相続人」と
     呼びます。
    

     誰が「相続人」となるかは、民法に規定があります。
     法律で定められているので、「
法定相続人」と呼びます。
     また、「法定相続人」の取り分も法律で決められており、これを「
法定相続分」と呼びます。


     そして、「相続」の話と切り離すことができないものが「
遺言」です。
     「遺言」は生前に自分の財産をどのように分けるかなどについて意思表示をすることです。
     法律的には、この意思を書面で残しておきます。


     「遺言」についての詳細は「遺言トータルサポート」をご覧下さい。


     なぜ「遺言」の説明をしたかと言いますと、この「遺言」によって法定相続分を変えることができて
     しまうのです。
     「遺言」で指定された相続分を「
指定相続分」と呼びます。


     さらに、「遺言」に記載しておけば、法定相続人でない人にも相続をさせることが可能になります。
     そのため、誰かが亡くなった場合、相続に関して言えば、
「遺言」があるかないかを確かめる必要が
     
あります
     それによって、誰が財産を相続するのか、また具体的にどのような財産を相続するのかが変わってく
     るからです。


     以下は「遺言」がなかった場合のケースになります。
     「遺言」がある場合のケースは「遺言トータルサポート」をご覧下さい。



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2.誰が「法定相続人」か?


     人が亡くなると、相続が開始されるのは前述した通りです。
     そして、誰が相続人になるのかは、民法で定められています。


     
(1)配偶者


     配偶者(結婚相手)は
常に相続人になります
     注意点は、戸籍上の夫または妻でなければならない点です。
     夫婦と同様に生活をしているが、婚姻届を出していないいわゆる内縁関係にある場合は、相続人では
     ないのです。
     そこで、内縁の夫や妻に財産を渡したい場合には、「遺言」を残しておくことが有効です。


     
(2)子


     子供は何人いても法律上はみんな平等です。
     8人兄弟の上から5人までしか相続できないなどといったことはありません。
     

     また、
養子でもかまいません
     実の親との親子関係が切れていなければ、実の親と養親の両方から財産を相続できます。


     法律的な親子関係があることが必要になるため、再婚相手の連れ子は、相続人ではありません。
     再婚相手の連れ子に財産を渡したい場合は、養子縁組をするか、「遺言」を残しておくことが必要で
     す。


     さらに、法律上の婚姻関係にある父母の間に生まれた子(「嫡出子」ちゃくしゅつし)でも、そうで
     ない子(「非嫡出子」ひちゃくしゅつし)でも同じ相続人です。
     しかし、相続分が異なります(後述します)。


     
(3)直系尊属


     少し難しい表現になっていますが、要するに、父母、祖父母、曽祖父母といった
上の世代の親戚のこ
     とです。
     上の世代から親子関係としてつながっていることが必要になりますので、伯父伯母などは直系尊属に
     はあたりません。


     注意点は、自分と
血のつながりが近い人から相続人になるということです。
     つまり、父母のどちらか一人でも生きていれば、祖父母は相続人にはなりません。
     父母、祖父母が全員亡くなっていて初めて曽祖父母が相続人ということになります(あまりない例だ
     とは思います)。


     
(4)兄弟姉妹


     兄弟姉妹は何人いても法律上は平等です。
     兄姉は相続人で、弟妹は相続人でないということはありません。
     父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹も相続人ですが、相続分に違いが出てきます(後述します)。



     そして、ポイントは、これらの相続人には
順位が定められているという点です。


     配偶者は、別格ですが、順位は以下のようになっています。

     第1順位・・・子

     第2順位・・・直系尊属

     第3順位・・・兄弟姉妹


     上の順位の人たちがいない時に初めて相続人になることができます。


     つまり、第1順位である子がいれば、子が相続人ということになり、父母や兄弟たちがいても彼らは
     相続人ではありません。
     別格である配偶者は、いれば常に相続人になりますので、配偶者と子が法定相続人ということになり
     ます。


     子がいなければ、初めて第2順位である直系尊属(父母など)が相続人になれるのです(配偶者がい
     れば、配偶者も相続人です)。


     第3順位である兄弟姉妹が相続人になるためには、子供も父母や祖父母などの直系尊属もいない状態
     になければなりません(この場合も、配偶者がいれば配偶者も相続人です)。


     法定相続人が誰かということは、非常に単純なことなのですが、意外と重要です。
     自分が相続人であると勘違いした人が、財産の分割に首を突っ込んだ結果、話がこじれているような
     例もあったりするのです。
     例えば、お父さんが生きているにもかかわらず、弟が兄の財産の相続を主張したり、伯父さんや内縁
     の妻や再婚相手の子供が相続を主張してみたりといったこともありえます。


     そのようなことを避ける意味でも、まずは誰が相続人なのか、しっかりと把握することが必要です。
     

     
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3.それぞれの「法定相続分」は?


     相続人が誰なのかはっきりしたならば、それをどのような割合で分けるのか、が問題になります。
     相続割合を「相続分」と呼びますが、これも民法で決められています。
     ちなみに、相続人が1人しかいない場合は、その人が100%相続することになるので、「相続分」
     は考える必要はありません。


     
(1)配偶者と子が相続人の場合


     
配偶者が2分の1子が2分の1の割合で分けます。
     子供が2人いる場合は、2分の1をさらに2人で平等に分けます。
     父が亡くなり、母、兄、妹が相続人なら、2分の1、4分の1、4分の1という分け方になるわけで
     す。
     そして、前出の「嫡出子」と「非嫡出子」ですが、「非嫡出子」は「嫡出子」のさらに半分という割
     合になります。


     
(2)配偶者と直系尊属が相続人の場合


     
配偶者が3分の2直系尊属が3分の1の割合で分けます。
     直系尊属が2人いる場合は、3分の1をさらに2人で平等に分けます。
     夫が亡くなり、妻、父、母が相続人なら、3分の2、6分の1、6分の1という分け方になります。


     
(3)配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合


     
配偶者が4分の3兄弟姉妹が4分の1の割合で分けます。
     兄弟が3人いる場合は、4分の1をさらに3人で平等に分けます。
     兄が亡くなり、兄の妻、弟、姉、妹が相続人なら、4分の3、12分の1、12分の1、12分の1
     という分け方になります。
     兄弟であっても父母の一方が異なる場合(前妻の子など)は、現在の妻の子である他の兄弟のさらに
     半分の割合になります。


     上記の通り、誰が相続人になるかで、配偶者の割合は異なりますので、注意してください。
     子や兄弟が複数いた場合など、同順位の相続人が何人かいるときは、配偶者の分を引いた残りを平等
     に分けることになります(ただし、非嫡出子や異母兄弟などの例外はあります。)。


     また、相続人全員で話し合ってこの割合を変えることもできます。
     この話し合いを「
遺産分割協議」と呼びます。


     
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4.「相続分」の修正


     「法定相続分」は法律で決められているものですが、生前の被相続人の財産との関わり方によって、
     相続分が修正がされることがあります。


     
(1)特別受益


     相続人が被相続人から生前に贈与を受けていたり、遺言により贈与を受けた場合、遺産の一部をすで
     にもらっていると解釈され、相続時に「特別受益」として清算されます。
     もうすでにもらっているのだから、相続分としてはちょっと減らしますよ、ということです。


     生前の贈与は、すべてが特別受益の対象になるわけではなく、以下のものに限られます。

     ◎ 婚姻や養子縁組のための贈与
       (例えば、持参金や嫁入り道具、支度金などの多額の出費)

     ◎ 生計の資本となる贈与
       (例えば、住宅購入資金、開業資金、将来の職業に密接につながる医学部などの高額の学費)


     
(2)寄与分


     被相続人の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人に対し、「寄与分」として相続分を超える財産
     を取得させます。
     財産を維持したり増やしたりすることに協力した人には、少し相続分を増やしてあげようということ
     です。


     しかし、この「寄与分」は少し難しい面もあります。
     それは、「寄与分」は相続人間の協議や家庭裁判所の審判によって初めて決まるため、内容や程度を
     具体的に決めにくいのです。
     そこで、もし「寄与分」が事前に考えられそうなケースでは、被相続人が寄与をした相続人に遺言で
     贈与をしておくのも1つの方法です。


     寄与の例としては、以下のようなものが考えられます。

     ◎ 夫の事業のために妻が相当の資金を提供した

     ◎ 子が父親の家の新築資金を贈与した

     ◎ 次男が母親を引き取り全面的にその面倒をみた    など
                           

     
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5.相続人決定時に知っておくと便利な知識


     相続人を決定する際に知っておくと良い知識というものもあります。


     
(1)欠格


     「欠格」とは、相続人が自らの犯罪行為や不正行為によって相続人になる資格を失うことを言います
     (「(資)格」を「欠」く、ということです。)。


     これについても民法に規定がありますが、簡単に言うと、自分の取り分を増やすために犯罪行為や不
     正行為を行った場合、その人は相続人の資格を自動的に失うのです。
     事実が判明すれば良く、
手続は何もいりません
     また、遺言で財産をもらうことになっていたとしても欠格が優先され、遺贈を受けることはできなく
     なります。


     具体的には、被相続人や他の相続人を殺し(未遂も含む)、刑に処せられた者や詐欺・強迫によって
     被相続人に遺言を書かせたり、遺言を取り消させたり、内容を変更させた者などが挙げられます。


     
(2)廃除


     「廃除」とは、被相続人が相続人に適さない者を拒絶することです。
     これは「欠格」とは異なり、
事前に手続が必要になります。
     被相続人自らが生前に家庭裁判所に廃除を申し立てる、または遺言書で廃除の意思表示をするという
     方法で行い、廃除を認める調停・審判により相続権を失うことになります。
     被相続人は相続人が何となく気に入らないという理由では、「廃除」を行うことができず、廃除理由
     が必要になります。
     主なものとしては、被相続人を粗末に扱った、もしくは虐待した、または、著しい不行跡などがあり
     ます。


     また、「廃除」できるのは、
配偶者、子、直系尊属のみで、兄弟姉妹は「廃除」できません。
     ですから、どうしても兄弟姉妹に相続させたくない時は、遺言を使うのも1つの方法です。


     さらに「欠格」と異なる部分としては、「廃除」した者に遺言で贈与したり、生前に任意で贈与する
     ことができる点が挙げられます。


     
(3)相続放棄


     「相続放棄」は、トラブル防止の意味では、非常に重要なものです。
     「相続放棄」は、文字通り相続権を放棄することです。
     なぜこれが重要になるかと言いますと、被相続人にマイナスの財産(法律上の財産はプラスのものと
     は限りません。つまり、借金などのマイナスの財産もありうるのです。)があった場合に、「相続放
     棄」をすれば、マイナスの財産を全く引き継ぐ必要がなくなるのです。


     しかし、ここで注意していただきたいことがあります。
     それは、「相続放棄」は
マイナスの財産だけでなく、プラスの財産も引き継げなくなるということで
     す。


     例えば、1億円の土地と1億円の借金が財産としてあるとします。
     この場合、「相続放棄」をすると、1億円の借金を負わなくてよくなる代わりに、1億円の土地も手
     放すことになります。


     そして、「相続放棄」はいつまでもできるわけではありません。
     
被相続人死亡後、原則として3ヶ月以内に、被相続人の住んでいた地域を管轄する家庭裁判所に相続
     放棄申述書を提出する必要があります(申述書は家庭裁判所でもらえます)。
     申述書が受理されると、初めから相続人ではなかったものとみなされます。


     被相続人の死後は何かと忙しく、3ヶ月はすぐに経ってしまうと思います。
     ちなみに、「相続放棄」をせずに3ヶ月経ってしまいますと、原則として、プラスの財産もマイナス
     の財産もすべて引き継ぐことになります。
     場合によっては、「相続放棄」を行うか否かで、今後の人生が大きく左右されることにもなりかねま
     せん。
     この点は、十分に注意してください。


     
(4)限定承認


     実は、マイナスの財産に対しては、もう1つ対策があります。
     それが「限定承認」です。
     「限定承認」とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐものです。
     つまり、プラスの財産を使って借金などマイナスの財産を返し、プラスの財産が残ったら、その分だ
     けを相続し、返しきれなくて、マイナスの財産が残ってもその部分は相続しないということになりま
     す。


     注意点は、「相続放棄」と同様で、
被相続人死亡後、原則として3ヶ月以内に、被相続人の住んでい
     た地域を管轄する家庭裁判所に相続限定承認申述書を提出する必要があるということです(申述書は
     家庭裁判所でもらえます)。
     期限を過ぎてしまうことのないように注意してください。


     これだけ聞くと、「とりあえずいつでも「限定承認」をしておけば、「相続放棄」はする必要がない
     な」と思ってしまいそうです。


     ところが、この「限定承認」は、なかなか面倒な側面もあるのです。
     それは、「限定承認」をするためには、
相続人全員の同意を得ることが必要で、複数の相続人間がい
     たとして、それぞれの折り合いが悪く同意をしてもらえないと「限定承認」できません。
     また、申述書の受理から5日以内に、債権者にそのことを
公告しなければならないため、「相続放棄」
     と比べると、少し面倒になります。
     それでも、マイナスの財産がいくらかはっきりしない場合などには便利な方法と言えるでしょう。


     ですから、明らかにマイナスの財産が多い場合は、「相続放棄」、マイナスの財産がよくわからなく
     て、最終的には、少しプラスの財産が残るかもという微妙な時は「限定承認」、明らかにプラスの財
     産が多い場合は「単純承認」(普通にすべて財産を相続することです。)という方法がよろしいと思
     います。


     ただし、これらの見極めに関しては、難しい部分もありますので、注意が必要です。


     
(5)代襲相続


     「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」とは、本来の相続人が特定の理由で相続できない時に、その相
     続人の子孫が代わりに相続するというものです。
     特定の理由とは、
死亡・欠格・廃除の3つです。


     具体例としては以下のようなものがあります。
     お父さんがすでに亡くなっていて、子供たちが4人(長男・長女・次男・次女)いたとします。
     それぞれの子供たちは結婚してそれぞれに孫がいます。
     長男は、昨年、交通事故で亡くなってしまいました。
     長女は、お母さんの遺産欲しさに、お母さんをだまして、書いておいた遺言の取り消しをさせてしま
     いました。
     次男は、お母さんに暴力をふるっていた過去があり、廃除で相続権を失っています。
     このような状況下で、お母さんが亡くなってしまった場合、誰が相続人になるのでしょう?


     状況としては、長男は「死亡」、長女は「欠格」、次男は「廃除」されています。
     長男・長女・次男はそれぞれ理由は異なりますが、すでに相続権を失っています。
     そうすると、次女のみが相続人になるような気がしますが、この場合、そうはなりません。
     代襲相続によって、長男の子・長女の子・次男の子も相続人になるのです。
     結果として、お母さんの財産を次女を含めた4人で等分することになります。


     注意点としては、相続放棄しても代襲相続はありません。
     上記の例で、もし長男が生きていて、お母さん死亡時に相続放棄をしたら、代襲相続はされませんの
     で、長男の子は相続人になりません。
     お母さんの財産は次女,長女の子,次男の子の3人で等分します。
     

     さらに、長男,長男の子が死亡していて、長男の子に子供(ややこしいですが、お母さんからみると
     曾孫にあたります)がいる例ならば、曾孫が代襲相続します(「再代襲」と言います)。


     兄弟姉妹の間でも代襲相続はあります。
     例えば、兄が死亡した時に、本来、相続人であるはずの弟が先に死亡していたとしたら、弟の子に代
     襲相続されます。
     兄弟姉妹間の場合は、再代襲はありません。


     
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6.何が「相続財産」か?


     
(1)「相続財産」の種類


     「相続財産」の中には、プラスの財産(いわゆる「資産」)とマイナスの財産(いわゆる「負債」)
     とがあります。
     大まかに分けると、以下のようなものがあります。


     【 資産 】

     ◎ 不動産 ・・・ 土地,建物

     ◎ 動産  ・・・ 不動産以外の自動車,家具,宝石,骨董品など

     ◎ 売掛金,貸付金,社債など

     ◎ 現金  ・・・ 預貯金を含みます。

     ◎ 株式  ・・・ 自社,他社問いません。

     ◎ 権利  ・・・ 債権以外の著作権,電話加入権など

     ◎ 借地権・借家権


     【 負債 】

     ◎ 借金  ・・・ ローン,クレジットカード未払分など

     ◎ 買掛金

     ◎ 連帯保証債務


     
(2)「相続財産」かどうかわかりにくいもの


     財産の中には「相続財産」になるのかどうか迷うものもあると思います。
     代表的なものをいくつか挙げてみます。


     【 生命保険金 】


     生命保険金は
原則的に相続財産にはなりません
     生命保険金は被相続人が生前有していたものではなく、死亡によって初めて受取人に対して支払われ
     るものだからです。
     ただし、掛け金を被相続人が負担していたという観点から、相続税課税の対象にはなりますので、注
     意してください。
     また、例外として、保険金受取人が被相続人自身である場合には、相続財産として扱われます。
     保険金の受取人が相続人である場合には、争いがありますが、原則として特別受益者にあたると解釈
     されています。


     【 会社 】


     会社自体は
相続財産ではありません
     ですから、社長が死亡したので、自動的に息子が社長、ということにはなりません。
     ただし、前述した通り、株式は相続財産になりますので、株主として必要な手続を経て、結果的に社
     長になるということは考えられます。


     【 墓地・墓石・仏壇・位牌 】


     墓地などの宗教的慣習に基づくものは祭祀財産と呼ばれ、
相続財産には含まれません
     祭祀財産は、相続財産とは切り離して、祖先の祭祀を主宰する者が承継することになるのです。
     そのため、相続人が祭祀承継者になっても相続分には影響がありません。
     どんなに高価な墓石を承継しても、それによって相続分が減らされるようなことはないのです。


     【 身元保証・連帯保証 】


     
身元保証の役割については相続しません
     父親が誰かの身元保証人だったからと言って、子供がその地位を引き継ぐことはないのです。
     ただし、身元保証人に対して既に発生してしまっている債務については、相続されます。
     例えば、身元保証した人物が、300万円の使い込みをしてしまったとすると、身元保証人は30
     0万円の保証をしなければなりません。
     身元保証人が300万円支払う前に死亡した場合、相続人は、身元保証人の地位そのものは相続し
     ませんが、300万円の債務に関しては相続することになるのです。


     これに対して、
連帯保証は、原則的に相続されます
     ですから、1000万円の借金をしている人の保証人であった父親が死亡した場合、相続人である
     奥さんや子供は保証人の地位を受け継ぐことになります。
     ただし、責任限度や責任期間の定めのない信用取引の保証人の地位は相続されません。



     
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7.「相続財産」の把握


     次に、実際に被相続人がどれだけの財産を持っているのか追跡していきます。
     この「相続財産」の把握はトラブル予防という意味で大変重要です。
     後から財産が出てきてしまうようないい加減な追跡を行っていると、せっかく話し合ってうまくま
     とまりかけた相続が根底から覆されることにもなりかねないからです。


     不動産に関して所在がわかっているならば、登記簿謄本を法務局で取ります。
     よくわからない場合には、市区町村役場で固定資産の名寄帳(なよせちょう)を取り寄せます。
     しかし、名寄帳だけでは他の市区町村にある不動産はわからないため、役所から送られてくる固定
     資産の明細書から追跡する方法もあります。


     預貯金に関しても、すべての通帳を元に把握する必要があります。


     さらに問題となるのが、被相続人が借金を負っていたり、連帯保証人であった場合などです。
     これらの負債に関しては、家族にもなかなか話しづらく、後になって判明する例も多く見られます。
     借用書や覚書などは特に念入りに探す必要があると言えるでしょう。


     このようにして、被相続人がどれだけの「相続財産」を持っているのか把握していきます。
     そして、これらの相続財産の評価については、相続開始時点の評価ではなく、
現実に遺産を分割す
     
る時点の時価によってなされます
     遺産分割までに、時間がかかることもあるため、相続開始時点で相続財産を評価してしまうと、遺
     産分割時点で財産価値に大きな相違が生じる場合もありうるのです。
     そのため、なるべく直近の時点で財産価値を評価しようとしています。


     以上のことを考慮しつつ、いよいよ相続人間で相続財産をどのように分けるのか協議していくこと
     になります。


     
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8.「遺産分割協議」の基礎知識


     
(1)「遺産分割協議」の必要性


     「相続人」と「相続財産」が決まったならば、それをどのように分割するのか、相続人の間で決め
     ていきます。


     確かに、基本的に「相続分」は決まっています。
     しかし、現金など「相続分」通りに分けやすい財産しかなければ、それほど問題はありませんが、
     不動産などの分けにくい財産がある場合もあります。

  
     また、前述した「寄与分」については、相続人の話し合いなどで決まるため、その分を考慮した財
     産の分割が必要になってきます。


     さらに、「遺言」がある場合にも、それが財産のすべてを網羅しているとは限りません。
     「遺言」に書かれていない財産の分割については、やはり話し合いをする必要があるでしょう。


     そういった問題を解決するために、相続人同士で財産の分割について話し合う「遺産分割協議」が
     必要なのです。
     実際には、「法定相続分」に基づいて分割することが困難な場合も多く、「遺産分割協議」によっ
     て相続財産が分けられる例が多くあるのです。


     
(2)「遺産分割協議」の方法


     遺産分割には、次のような方法があります。
     どれを選択するかは、個々の事情次第ですが、よく話し合っておかないと、後々、問題を残す結果
     になってしまいますので、注意が必要です。


     @ 現物分割(げんぶつぶんかつ)


     遺産の形を変えずに、現物をそのまま各相続人に分配する方法です。
     例えば、自宅は長男、預金は次男といったように、現物を分けてしまうのです。
     分配する財産の価値が同じ場合や相続人が相続したい財産がそれぞれはっきり分かれている場合に
     有効な方法です。


     A 代償分割(だいしょうぶんかつ)


     1人または数人が財産をまとめて相続し、残りの相続人に相続分に相当する金銭(代償金)を支払
     う方法です。
     主な財産が不動産などで分割が困難な場合や店舗や工場などを相続して、後継者が事業を継続する
     場合などに使われる方法です。
     ただし、財産をまとめて相続する者に代償金を支払えるだけの資力があることが必要になってきま
     す。


     B 換価分割(かんかぶんかつ)


     財産の全部もしくは一部を売り、現金に換えて、相続分に応じて分配する方法です。
     これは、現物分割、代償分割が不可能な場合(例えば、代償金を支払える人がいない場合)などに
     使われる方法です。


     C 共有分割(きょうゆうぶんかつ)


     財産の全部もしくは一部を相続人の全員または一部の者が共有取得する方法です。
     共有者となる相続人で一部の土地などを利用・処分したい時などに使われる方法です。


     
(3)「遺産分割協議」の進め方


     ここからは、実際にどのように「遺産分割協議」を進めていくかという話になります。


     まずは、関係者を集めます。
     と簡単に書いてしまいましたが、実は誰が関係者か?という問題があるのです。


     遺言がないことを前提にすると、法定相続人が関係者になります。
     ところが、本当に自分たちがわかっている親戚だけが、相続人かはわからないのです。
     実は、どこかに子供がいるかもしれないですし、被相続人の本当のところは、その人にしかわかり
     ません。


     そこで、法定相続人に洩れがないように、戸籍謄本を被相続人の出生までさかのぼって調べておく
     ことをお勧めします。
     関係者を一人でも欠いて協議を行っても、協議は無効となってしまいます。
     そのため、その場合には、代理人を立てたり、あるいは郵送や議事を転送するなどして対応します。
     重要なことは、すべての関係者が何らかの形で協議に参加することです。


     そして、関係者が集まったら、いよいよ協議に入っていきます。
     この協議に関しては、千差万別です。
     すぐに、話がついてしまう場合もあれば、泥沼化して調停や審判といった家庭裁判所での手続にゆ
     だねる場合もあります。
     相続人の数や相続財産などによっても、状況は、まるで変わってきます。
     個別の状況に応じて対応していくしかないのです。


     そのため、一般論としてもなかなか説明しにくい部分なのですが、経験上、遺産分割協議は
相続人
     
のみが集まって話し合う方が比較的話がまとまりやすいと思われます。
     そんな当たり前のことを、と思う方もいらっしゃると思いますが、遺産分割協議の場に相続人以外
     の方がいらっしゃる例は意外に多いものです。
     具体的に言うと、相続人の配偶者などが遺産分割協議の場にいることで話がややこしくなる例とい
     うものが意外とあるのです。
     遺産分割協議の場に相続人以外の方がいてはいけない、ということはありませんが、人数が増えれ
     ば増えるほど、それぞれの思惑が出てきて、まとまりにくくなる傾向にあるようには思います。


     
(4)「遺産分割協議書」の書き方


     「遺産分割協議」を行って、誰がどの財産を相続するのかを決定したら、今度はそれを「遺産分割
     協議書」という形で書面に残します。
     せっかく話し合って、まとまったはずの話も書面に残しておかなければ、後になって、そんな分割
     には同意していないと言い出す方が出てこないとも限りません。
     「遺産分割協議書」の作成は義務ではありませんが、そのような事態を防ぐために、作成すること
     をお勧めします。


     「遺産分割協議書」の
書き方は特に決まっているわけではありません
     手書きでもパソコンで作成してもまったく問題ありません。
     用紙の大きさなどにも制限はありません。


     協議書にどの
相続人がどの財産を取得するのかの列挙していきます。
     不動産については登記簿謄本の記載通りに書いていきます。
     銀行預金などは銀行名、支店名、口座番号、残高を書くことで特定させます。


     書き方に決まりがあるわけではないのですが、どの財産を誰が取得するかが明らかにならないと意
     味がありません。
     例えば、財産の中に何百万もする掛け軸があったとして、それが唯一の掛け軸であれば、「掛け軸」
     と書くだけで財産の特定ができますから問題はありません。
     しかし、その掛け軸の他に別の5000円の掛け軸が財産の中にあったとしたら、作者などでどの
     ような掛け軸かを明確にしなければならないでしょう。
     要は、どの財産を誰が取得するのかわかる書き方をする必要があるのです。


     また、トラブル予防という意味では、その後、新たに財産が出てきた場合には誰が取得するかまで
     あらかじめ決めておくのも1つの方法です。


     そして、最後の仕上げとして、
住所と名前を書きます
     住所は、住民票などの住所に合わせます。
     パソコンで書いても問題ありません。
     名前は
直筆で署名します。
     最後に
実印を押します(認印では不可です)。


     ちなみに、遺産分割の結果、遺産をまったく相続しないことになった人も署名捺印が必要になりま
     す。
     
「遺産分割協議」は相続人全員の同意がないと無効になりますので、「協議書」にも、相続人全員
     の署名捺印が必要になります。
     そして、相続人同士が離れて暮らしていることは、よくあることですが、その場合には、郵送など
     の持ち回りで署名捺印するケースが多いようです。


     「遺産分割協議書」が数枚にわたる場合は
ページとページの境目に実印を押します(契印と言いま
     す)。
     それらを人数分作成し、各相続人が1部ずつ保管します。


     さらに、不動産の名義を変更する登記申請の場合にも「遺産分割協議書」が必要となります。
     この場合には、各人の印鑑証明書も添付する必要があります。


     また、預貯金の引き出しの際にも「遺産分割協議書」が必要となります。
     ただし、銀行によっては、原本を提示して、コピーを渡せば良い場合もありますので、事前に確認
     される方がよろしいと思います。


     このような取り扱いになっているため、各相続人分に加えて、不動産の数、通帳の数の分など、遺
     産分割協議書を多めに作成しておくのも1つの方法です。
     後から、手続用に改めて遺産分割協議書を作成する手間を省くことができます。


     
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9.「相続財産」の名義変更


     「遺産分割協議」で、誰が何を相続するか決まると、相続財産によっては名義を被相続人から相続
     人に変更する必要が生じます。
     名義変更が必要な主なものを見ていきます。


     
(1)不動産


     まず、不動産の名義変更ですが、いつまでに名義変更をしなければならないという
期限はありませ
     

     そのため、手続が面倒であったり、登録免許税という名義変更に必要な税金の関係で、といった理
     由で名義変更しない方もいらっしゃいます。
     しかし、登記をしないということは第三者にとってみると不動産の持ち主がよくわからないことに
     なりますので、それが元で思わぬトラブルが生じることもあります。
     また、その不動産を売ったり、担保にしたりといったことは事実上できにくくなります。
     ですから、名義変更はなるべく早くされる方がよろしいと思います。


     不動産の名義変更は、その不動産の所在地を管轄する法務局で行います。


     一般的に用意するものは以下のものです。
     ただし、個々の事情によって用意するものが異なってきますので、事前に法務局で確認をとること
     をお勧め致します。


     ◎ 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)

     ◎ 相続人それぞれの戸籍謄本(上記と重複するものは省略可)

     ◎ 不動産を相続する人の住民票の写し

     ◎ 不動産の固定資産税評価証明書

     ◎ 遺産分割協議書(相続人全員が署名し実印で押印)

     ◎ 遺産分割協議書に押印した人の印鑑証明書

     ◎ 登記申請書

     ◎ 登記申請書副本(上記申請書のコピー)

     さらに、誰かに手続をお願いするときには、

     ◎ 代理権限証書(つまりは委任状です。)


     そして、登録免許税は、不動産の価格(固定資産税評価額の1000円未満を切り捨てたもの)の
     1000分の2です。
     現金ではなく、収入印紙という形で納付します。


     
(2)預貯金


     預貯金も名義変更が必要になります。
     こちらも金融機関によって取扱が異なりますので、それぞれの金融機関で確認することをお勧め致
     します。
     これは1つの例としてご覧ください。
     名義変更は、その口座のある支店の金融機関の窓口でのみ受け付ける例が多いです。


     一般的には以下のものを用意します。


     ◎ 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)

     ◎ 被相続人の口座の預金通帳・銀行印

     ◎ 遺産分割協議書(相続人全員が署名し実印で押印)

     ◎ 遺産分割協議書に押印した人の印鑑証明書

     この他にも、相続人の住民票の写しを要求される場合や金融機関所定の用紙に記入を求められる場
     合もあります。
     また、戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書などはコピーして返してくれる場合もあります。


     
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10.「相続税」の基礎知識


     
(1)相続税の基本


     相続税について気にされる方は多いですが、実際に相続税を納める必要のある方は、
全体の5%
     の方に過ぎません。


     まず、相続税を納めるかどうかの大きな基準として、基礎控除額というものがあります。
     これは相続税を計算するにあたって引かれる金額であるため、
課税価格が基礎控除額以下である
     
ならば、相続税はかからないのです。


     基礎控除額は「 5000万円 + 1000万円 × 法定相続人の数 」となります。


     例えば、お父さん、お母さん、子供2人の家族で、お父さんが亡くなった場合、法定相続人は3
     人になります。
     ですから、基礎控除額は、5000万円 + 1000万円 × 3人 で8000万円という
     ことになります。
     この場合では、課税価格が8000万円以下なら相続税はかからないのです。
     そう考えると、子供が多いご家庭では基礎控除額が増えますので、相続税はかかりにくくなりま
     す。


     相続税対策で、養子になったという話を耳にすることがあります。
     それは、法定相続人を増やすことで基礎控除額を増加させる意味があったのです。
     ただし、相続税法上、法定相続人に含めることのできる養子の人数が決まっていますので(1人
     または2人)、相続税対策で養子を増やしすぎても意味はありません。


     そして、ここで注意していただきたいことがあります。
     「相続財産」ではなく、「課税価格」が基礎控除額以下なら相続税を納める必要がない、と書き
     ましたが、
「課税価格」は「相続財産」よりも考慮する財産の範囲が少し広くなります


     例えば、生命保険金は相続財産にはあたりませんが、相続税の計算をするときには考慮しなけれ
     ば、なりません(生命保険金全額が「課税価格」に含まれるわけではありません。)。


     さらに、相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産も「課税価格」に含まれます。
     ここは意外と見落としがちなので、注意してください。
     生前の贈与と言うと、「特別受益」と混乱しそうですが、「特別受益」は相続分を計算する場合
     の話であって、税金の話とは別の問題です。


     
(2)相続税の計算方法


     課税価格が基礎控除額を超える場合は、その差額に対して相続税がかかる可能性が出てきます。
     相続税の計算は、遺産分割協議の内容にかかわらず、法定相続分で相続したと仮定して行います。


     例えば、先ほどの父・母・子2人(兄と弟としましょう)の例で、父の財産が1億円だったとし
     ます。


     そうすると、基礎控除額8000万円を引いた2000万円に対し課税される可能性が出てきま
     す。
     2000万円を法定相続分で分けると、母は1000万円、子はそれぞれ500万円という計算
     になります。


     そして、それぞれの金額に対して決まった割合で相続税がかかることになります。

     母 : 1000万円 × 税率10% − 0円 = 100万円

     子 :  500万円 × 税率10% − 0円 =  50万円

     ということになります。


     この税率や控除金額は、以下のようにそれぞれの取得金額に対して何%で、いくらという決め方
     がされています。


     【 相続税速算表 】


     各法定相続人の取得金額 × 税 率 − 控  除  額   =  相続税額

      1000万円以下     10%       0円

      3000万円以下     15%     50万円

      5000万円以下     20%    200万円

         1億円以下     30%    700万円

         3億円以下     40%   1700万円

         3億円超      50%   4700万円


     そして、それぞれの金額を合計して、相続税の金額が決まります。
  
     母(100万円) + 子(50万円) × 2人 = 200万円


     この金額を実際に相続した財産の金額に対して振り分けます。
     1億円の財産を、母が7500万円、兄が2500万円、弟が0円という形で遺産分割協議の結
     果、相続していたとします。
     そうすると、相続税は、割合に応じて、母150万円、兄50万円ということになります。


     
(3)相続税の税額控除


     さらに、相続税はいろいろと控除される可能性があります。


     その1つが配偶者控除です。
     
配偶者には、法定相続分か1億6000万円のどちらか大きい金額以内であれば、相続税はかか
     りません。


     上記の例では、母は法定相続分5000万円を超えて7500万円相続していますが、1億60
     00万円以内ですから、相続税はかかりません。
     したがって、この控除を使えば、母の相続税150万円は納めなくても済むのです。


     その他に、小規模宅地の特例もあります。
     これは、
居住用宅地は240平方メートル、事業用地は400平方メートルまで評価額を80%
     
減額できるという特例です。
     細かな条件はありますが、基本的に引き続き住居として住み続けていけば、240平方メートル
     (約72坪)までは減額されるわけですから、お得な特例と言えます。


     しかし、これらの控除は、相続税の申告期限(
相続開始の日の翌日から起算して10ヶ月目の日
     までに、遺産分割協議を済ませて、申告・納税をしなければいけないのです。
     これらの控除・特例を使うためにも、申告期限は過ぎないように注意してください。


     
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